1. 税制の概要:なぜ今「脱炭素×付加価値」が求められるか
環境変化や取引先・市場からの脱炭素要求が強まる中、企業にとって「CO₂ 排出量を減らす」だけでなく
「付加価値を維持・向上しながら脱炭素化を進める」ことが重要になっています。
このような背景のもと、政府は設備投資を通じて脱炭素を促進するため、
カーボンニュートラル投資促進税制(CN税制)を設けています。
中小企業がこの制度を活用すれば、脱炭素設備投資を「コスト」ではなく
「成長機会」と捉えることが可能になります。
詳細については、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制<外部リンク>を参照ください。
2. 対象となる事業者・設備・計画条件
■ 対象事業者
- 青色申告を行う法人・個人事業主で、
- 産業競争力強化法に基づく「エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画」の認定を受けた事業者。
- 中小企業者か、それ以外の事業者かによって適用条件や優遇内容が異なります。
■ 対象設備
- 機械装置・器具備品・建物附属設備・構築物・車両(一定の鉄道用車両含む)など、
設備単位で「炭素生産性」が1%以上向上するもの。 - ただし、照明設備や対人空調設備(使用者の快適性確保目的)は対象外となるケースもあります。
■ 計画条件(炭素生産性)
- 「炭素生産性」とは、付加価値額 ÷ エネルギー起源CO₂排出量で算出されます。
- 中小企業者等の場合、認定計画で 3年以内に10%以上(あるいは17%以上)向上 という
水準を目標とする必要があります。
3. 優遇措置(税額控除・特別償却)と具体的な数値
この制度を活用すれば、以下のような税制優遇が受けられます(2024年改正後の概略)。
| 企業区分 | 炭素生産性向上率 | 税額控除 | 特別償却 |
|---|---|---|---|
| 中小企業者等 | 17%以上 | 税額控除 14% | 特別償却 50% |
| 中小企業者等 | 10%以上 | 税額控除 10% | 特別償却 50% |
| それ以外の事業者 | 20%以上 | 税額控除 10% | 特別償却 50% |
| それ以外の事業者 | 15%以上 | 税額控除 5% | 特別償却 50% |
ポイントとして、税額控除を選択すれば法人税額そのものが減少するため、
実質的な節税効果が高くなります。
特別償却は即時に一定割合を経費化できるものの、将来の償却費が減るため
「税の繰延べ」になる点を理解しておくべきです。
4. 申請・認定の流れと注意点
■ 主な手続きの流れ
- エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画を作成し、認定を受ける。
- 認定を受けた日から原則3年以内に対象設備の取得・使用開始。
- 対象設備を取得し、事業の用に供した年度の税務申告時に優遇措置を適用。
■ 注意すべき点
- 計画認定前に設備を取得・使用開始してしまうと優遇適用にならない可能性あり。
- 対象設備の範囲・除外設備を事前に確認。
- 炭素生産性の向上率を達成できないと優遇率が下がったり、
適用できなくなったりすることがあります。
5. 活用のメリット&実務ポイント
■ メリット
- 脱炭素設備投資に対する実質的なコスト軽減が可能。
- 付加価値向上+CO₂削減という「攻めの設備投資」が促され、
中小企業でも成長戦略として投資を位置づけやすい。 - 税額控除を選べば、設備投資の効果がキャッシュフロー面でも明確になる。
■ 実務ポイント
- 投資前に「炭素生産性をどう改善するか」を数値化して整理すること。
- 補助金・税制・設備更新をセットで検討し、補助金活用+税優遇の二重取りも視野に。
- 計画書・稼働後モニタリング・実績報告の準備を早めに行い、設備導入スケジュールと手続きを整える。
6. よくある落とし穴・注意すべき点
- 計画期間を甘く見て「設備導入と手続きが間に合わない」ケース。
- 設備選びだけで“脱炭素”を考えてしまい、「付加価値向上」が伴わないため炭素生産性が上がらない。
- 照明・対人空調など、除外設備を誤って対象と判断してしまう。
- 補助金と異なり「税制」は申告・証明が重要。申請書類・認定書の保管漏れや、
不十分な実績報告がリスクとなります。
7. まとめ:脱炭素投資を“戦略的に”進めるために
カーボンニュートラル投資促進税制(CN税制)は、
中小企業が「脱炭素+付加価値向上」を両立するための有効な制度です。
設備投資をただのコストと捉えるのではなく、
税制優遇を活かした戦略的な投資と位置づけることが鍵となります。
設備の導入、補助金・税制の活用、資金繰りのバランス――この3つを踏まえた上で、
専門家(税理士・設備導入ベンダー・中小企業支援機関)とも連携して行動を始めましょう。
