企業経営の現場では、役員貸付金が発生するケースが少なくありません。
しかし、役員貸付金は税務調査におけるリスク項目のひとつであり、
また金融機関の融資審査においてもマイナス要因となります。
本記事では、役員貸付金の税務リスク・金融機関が忌避する理由・安全な対処法について解説します。
1. 役員貸付金とは?
役員貸付金とは、会社が役員個人に資金を貸し付けたものをいいます。
例としては、
- 会社の資金を一時的に個人の生活費に充当した
- 個人資産の購入に会社資金を流用した
- 経費と個人支出の区分があいまいになった
といったケースで発生します。
2. 税務上のリスク
(1) 利息の認定課税
役員貸付金に適正な利息を設定していない場合、認定利息として会社の収益に計上され、課税されます。
国税庁は利率の目安を公表しており、これを下回る場合には指摘されやすいです。
👉 参考:国税庁「No.2606 金銭を貸し付けたとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2606.htm
(2) 貸倒損失が経費にならない
役員貸付金が返済不能となっても、原則として損金算入できません。
つまり、会社にとっては「資産の流出」となり、税務上の損金処理が認められないため大きな負担となります。
3. 金融機関が役員貸付金を忌避する理由
融資審査において、金融機関は役員貸付金の存在を非常に嫌います。
主な理由は次のとおりです。
- 資金流用の疑い
本来、会社の事業資金であるべきものが、役員の私的利用に使われていると見られる。 - 返済可能性の低さ
役員からの返済は担保がなく、実質的に回収不能となるケースが多い。 - 粉飾決算の疑い
貸付金が実際には経費や報酬の仮装処理である可能性があり、財務内容の信頼性を損なう。
そのため、役員貸付金がある企業は「ガバナンスが弱い」と判断され、
融資や信用格付けに悪影響を及ぼすことがあります。
4. 安全な対処法
役員貸付金はできる限り早急に解消することが望ましいです。具体的な方法は以下のとおりです。
- 現金返済
役員が会社に対して速やかに返済する。 - 役員報酬から控除
毎月の役員報酬から天引きして返済に充てる。 - 賞与・配当金での精算
役員に支払う賞与や配当から貸付金分を相殺する。 - 経費処理の見直し
個人利用と会社経費の区分を徹底し、将来的に発生しないよう管理体制を強化する。
まとめ
役員貸付金は、
- 税務調査で認定利息や損金不算入の指摘を受けやすい
- 金融機関からの信用を大きく損なう
といったリスクがあります。
企業の健全経営と融資審査での信頼確保のためにも、早期に返済・精算することが重要です。
👉 国税庁「No.2606 金銭を貸し付けたとき」参考ページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2606.htm