はじめに
2025年12月に公表された「令和8年度税制改正大綱(いわゆる税制大綱2026)」は、
中小企業・個人事業主・個人にとって実務面の影響が非常に大きい改正が多く盛り込まれています。
本記事では、大企業向けの制度は割愛し、中小企業経営者・個人事業主・従業員を雇用する事業者にとって重要な「節税・増税」「給与・所得控除」「家計に直結する改正」にスポットを当てて、税制大綱2026のポイントをわかりやすく解説します。
外部リンク:「強い経済」への決断と実行 令和8年度与党税制改正大綱を決定
税制大綱2026の全体像(中小企業・個人向け視点)
今回の税制改正の方向性は明確です。
- 物価高による“実質増税”を是正する
- 中小企業の賃上げ・設備投資を重点的に支援
- 行き過ぎた節税や不公平感のある制度は是正
「誰でも減税」ではなく、生活者・中小企業を守りつつ、制度を使いこなす人が得をする税制へと移行しています。
① 給与所得控除・基礎控除の引上げ【個人・従業員に直結】
基礎控除・給与所得控除が物価連動へ
長年据え置かれてきた控除額が、物価上昇を反映して引き上げられます。
- 基礎控除:58万円 → 62万円
- 給与所得控除(最低保障額):65万円 → 69万円
令和8・9年分の所得税から適用され、年末調整で対応します。
▶ 中小企業にとってのポイント
- 従業員の手取り増加につながる
- 賃上げが難しい企業でも「実質的な負担軽減」になる
② 課税最低限178万円へ【いわゆる「年収の壁」対策】
基礎控除の特例拡充により、
- 所得税の負担開始ラインは178万円以上
となります。
パート・アルバイトを雇用する事業者にとっては、
- 就業調整の緩和
- シフト確保のしやすさ
といった効果も期待されます。
③ 中小企業向け「賃上げ促進税制」は維持
賃上げ促進税制は見直しが行われましたが、
- 中小企業向け制度は現行維持
とされました。
人手不足の中で「防衛的賃上げ」を行う中小企業への配慮が明確です。
▶ 実務上の注意点
- 大企業向け制度は廃止
- 中小企業でも適用要件の確認は必須
④ 少額減価償却資産の特例拡充【中小企業の節税】
中小企業・個人事業主が使いやすい節税制度である、
少額減価償却資産の特例が見直されます。
- 取得価額基準:30万円未満 → 40万円未満
- 取得時に全額損金(経費)算入可能
- 適用期限:3年間延長
▶ 設備更新・IT投資を検討している事業者には朗報です。
⑤ ひとり親控除の拡充【家計支援】
子育て世帯向けの支援として、ひとり親控除が拡充されます。
- 所得税:35万円 → 38万円
- 住民税:30万円 → 33万円
適用開始:
- 所得税:令和9年分から
- 住民税:令和10年度分から
⑥ 中小企業の事業承継を後押し
事業承継税制について、期限が延長されます。
- 法人版事業承継税制:特例承継計画の提出期限を延長
- 個人事業主向け制度も延長
▶ 「まだ先」と思っている事業者ほど注意
時限措置である以上、早めの検討が重要です。
⑦ 暗号資産・NISA・福利厚生の重要改正【個人・中小企業に追い風】
暗号資産取引が「申告分離課税」へ
これまで暗号資産(仮想通貨)の利益は、
- 雑所得
- 総合課税(最大55%)
という非常に不利な扱いでしたが、税制大綱2026では大きな転換が示されています。
- 暗号資産取引を申告分離課税へ移行
- 他の所得と切り離して課税
- 損失の繰越控除(3年間)も導入予定
▶ 個人事業主・副業投資家への影響
- 所得が増えても税率が跳ね上がりにくい
- 年度をまたいだ損益通算が可能に
長期的な資産形成として暗号資産を保有している人には、大きな改善といえます。
NISA(少額投資非課税制度)が18歳未満にも拡大
資産形成支援の一環として、NISA制度の対象年齢が拡大されます。
- 18歳未満もNISA口座の対象に
- 親が子どもの将来資金を非課税で運用可能
▶ 中小企業経営者・個人事業主の活用例
- 教育資金・将来の独立資金の準備
- 贈与と組み合わせた計画的な資産移転
「貯金から投資へ」を、より早い段階から後押しする改正です。
食事代補助の非課税枠が大幅拡充
従業員への福利厚生として多くの中小企業が活用している食事代補助について、非課税枠が見直されます。
- 非課税限度額:月3,500円 → 7,500円
▶ 中小企業にとってのメリット
- 実質的な手取りアップ(賃上げ代替策)
- 社会保険料の増加を抑えやすい
- 福利厚生の充実による人材定着
物価高対策として、非常に実務的で使いやすい改正です。
⑧ 増税・厳格化にも注意【不動産・相続対策】
中小企業・個人事業主にも影響し得る改正として、
- 貸付用不動産の評価方法見直し
- 行き過ぎた相続税・贈与税対策の是正
が検討されています。
不動産を使った節税を行っている場合は、今後の動向に注意が必要です。
※ 注意:本記事は税制改正大綱ベースの解説です
本記事で解説している内容は、令和8年度税制改正大綱(税制大綱2026)時点の情報に基づいています。
- 税制大綱はあくまで「政府の方針」
- 今後、国会審議を経て内容が変更・修正される可能性があります
- 実際の適用時期・要件は、税法改正成立後の政令・通達で確定します
制度を利用する際は、必ず最新情報を確認するか、税理士等の専門家に相談してください。
まとめ|中小企業・個人事業主が今から考えるべきこと
税制大綱2026は、
- 給与所得控除・基礎控除の拡充による家計支援
- 中小企業の賃上げ・投資を後押しする節税措置
- 不公平感のある節税スキームの是正
が同時に進む内容です。
特に、
- 設備投資のタイミング
- 賃上げ促進税制の活用
- 従業員の年末調整・扶養判定
については、令和8年を待たずに準備しておくことが重要です。
今後、法案成立・通達を踏まえた実務対応も順次整理していきましょう。
