はじめに
在庫は企業にとって「眠っている資産」であり、税務・経営の両面に大きな影響を与えます。
在庫評価をどう行うかによって、法人税等の課税所得や資金繰り・経営効率が変わるため、
定期的な見直しは欠かせません。
本記事では、在庫評価の基本、見直しによるメリット・デメリット、注意点について解説します。
在庫評価とは?
在庫評価とは、決算時点で残っている商品や原材料を「いくらの価値で計上するか」を決めることです。
代表的な方法は以下の通り:
- 先入先出法:先に仕入れたものから先に売れると仮定
- 後入先出法(現在は認められない)
- 総平均法:仕入れた金額の平均で計算
- 移動平均法:仕入れの都度、平均単価を更新
- 個別法:商品ごとに実際の取得原価で評価
在庫評価を見直すメリット
- 税務上の調整ができる
在庫金額が増えると利益が増え、税金が増加。逆に在庫を減らすと利益が圧縮され、納税額を抑えられる。 - 資金繰り改善につながる
不良在庫や滞留在庫を適切に評価・処分すれば、キャッシュフローの改善に直結。 - 経営効率の向上
正確な在庫評価を行うことで、仕入・生産・販売のバランスが把握でき、
過剰在庫の防止や販売戦略の見直しにつながる。
デメリット・注意点
- 税務リスク
評価方法を恣意的に変えて利益を操作すると、税務調査で指摘される可能性がある。
原則として評価方法は継続適用が必要。 - 手間・コスト
正確な在庫評価には棚卸作業やシステム整備が必要。
人件費やシステムコストが発生する。 - 在庫処分による損失計上
不良在庫を一気に評価減すると、その期の利益が大きく減る。
資金繰りや金融機関との関係に影響する可能性もある。
実務での見直しポイント
- 評価方法の選択と継続性
自社の業種・取引に合った方法を選び、毎期継続して適用する。
変更する場合は理由が必要。 - 滞留在庫の洗い出し
長期間動きのない在庫は、評価減や処分を検討。
保管スペースの効率化にもつながる。 - システム活用
在庫管理システムやクラウド会計ソフトと連動することで、実地棚卸の負担を減らし、精度を高める。
まとめ
在庫評価の見直しは、税務上の利益調整と経営効率の改善という両面で効果があります。
- メリット:納税額の調整、資金繰り改善、経営効率向上
- デメリット:税務リスク、手間・コスト、金融機関対応への影響
重要なのは「継続性」と「正確性」。
一時的な利益操作ではなく、健全な在庫管理と経営改善のための評価見直しが求められます。