2025年11月、国税庁より通勤手当の非課税限度額の改正が公表されました。
今回の改正は「2025年11月に公表されたにもかかわらず、
2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から適用する」という非常に例外的な遡及適用です。
そのため、給与・経理担当者の間でも認知が追いついておらず、
年末調整で必ず精算が必要になるケースが出ています。
この記事では、改正の内容・対象期間・年末調整での実務対応をわかりやすくまとめます。
1. 改正の根拠|国税庁:通勤手当の非課税限度額の改正について
📌 国税庁|通勤手当の非課税限度額の改正について
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/index.htm
📌 改正後の限度額一覧表(PDF)
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/01.pdf
📌 年末調整での記載例・取り扱い(PDF)
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/02.pdf
2. 改正内容
今回の改正は、次のような**マイカー通勤・自転車通勤など「交通用具使用者」**が対象です。
- 通勤距離が片道10km以上で非課税限度額が引き上げ
- 公共交通機関(電車・バス)の限度額150,000円は従来通り
例)片道45km以上~55km未満
旧限度額:28,000円
新限度額:32,300円
距離区分ごとの詳細は次を参照:
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/01.pdf
3. 改正の適用時期|2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当が対象
国税庁によると、
令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から適用
と明記されています。
しかし公表は 令和7年11月(2025年11月) であったため、次の問題が発生します。
■ 実務上のポイント
✔ 2025年4月〜11月に支払った通勤手当はすでに支給済み
→ 旧限度額で課税処理されている可能性が高い
✔ 新限度額を適用すると「非課税にできる金額が増える」
→ 本来より多く課税してしまった=源泉所得税を徴収しすぎている
✔ 年末調整で過不足を精算する必要がある
→ 4〜11月分を遡及計算して修正する
この「遡及適用」が今回の改正の最大の注意点です。
4. なぜ年末調整に影響するのか?
2025年4月〜11月分の給与はすでに支給済みであり、
その通勤手当について 旧限度額で課税処理されているケースがほぼ確実 です。
そのため、
- 新限度額に沿って再計算(非課税枠の増加分を算出)
- 課税対象額が減る
- 源泉所得税を取りすぎている
→ 年末調整で税金を返す
という流れになります。
国税庁は以下の資料で、年末調整での具体的な記載例を示しています。
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/02.pdf
5. 実務担当者が行うべき対応チェックリスト
✔ ① 給与ソフトが新限度額に対応しているか確認
11月の公表後にアップデートされたソフトが多いですが、
自動反映されないソフトも多数 あります。
✔ ② 従業員の距離区分を再確認
距離区分(片道km)が誤っていると限度額も間違うため、この機会に再確認を。
✔ ③ 2025年4〜11月の通勤手当を再計算
以下を照らし合わせる:
- 支給した通勤手当の総額
- 新非課税限度額(改正後)
- 差額(過大課税額)
✔ ④ 年末調整で源泉所得税の過不足を精算
従業員へ返金(または他控除との相殺)を行う。
記載例を参考:
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/02.pdf
✔ ⑤ 源泉徴収簿の数値を修正
非課税額の増加により、課税対象額が変わるため、
源泉徴収簿の金額も修正が必要。
6. 実務で起こりやすい間違い
● よくある間違い①:自動で新限度額に切り替わると思っている
→ 多くの給与ソフトは手動設定が必要。
● よくある間違い②:4月~11月分も再計算が必要なことに気づかない
→ 公表日が11月なので見落としがち。
● よくある間違い③:距離区分を昔のまま使っている
→ 従業員の通勤ルート変更が未更新のままの企業が非常に多い。
7. まとめ:2025年の年末調整は“通勤手当の遡及精算”が必須
今回の改正は、
- 公表は2025年11月
- 適用は2025年4月に遡る
- 交通用具使用者の非課税枠が引き上げ
- 既に課税処理した通勤手当の精算が必要
という、実務負荷の大きい内容です。
特に地方はマイカー通勤者が多く、影響が大きい改正です。
年末調整で正しく精算しないと、
従業員の税金を過大徴収したままになるため、確実な処理が求められます。
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