1. はじめに:中小企業で“経理体制をどうするか問題”
中小企業の経営者がよく直面するのが、
「経理を内製化すべきか、それとも外注すべきか」 という問題です。
・経理担当者を雇うと人件費が重い(給料・社会保険料など)
・外注するとスピードが遅いこともある
・税務判断は誰に聞いたらいいの?
・入力だけ外注しても意味はあるの?
など、実は「経理」というひとくくりの中にも複数の選択肢があります。
この記事では、
中小企業が最も失敗しづらい経理体制を、実務者目線でわかりやすく整理しました。
2. 内製化のメリット・デメリット
◆ 内製化(自社で経理スタッフを置く)のメリット
- スピードが速い
入金確認・支払処理・請求書管理が即日でできる。 - 自社独自の管理方法に最適化できる
経営者の好みや業種に合わせて柔軟に運用可能。 - 情報管理が社内で完結しやすい
外部に資料を渡すストレスが減る。 - 補助金申請などの細かい事務作業にも対応できる
◆ 内製化のデメリット
- 人件費が最も高い(社会保険込み)
- 担当者の退職=業務停止というリスク
- 税務判断はできない(税理士でないので)
- 属人化しやすい
「固定費が増える」ことと「人の入れ替わりリスク」は、特に小規模事業者にとって大きな問題です。
3. 外注化の種類と明確な違い
外注化といっても、実は以下の3つは全く違います。
- 税理士に委任(税務顧問+記帳)
- 会計事務所に外注(記帳代行メイン)
- 入力だけ外注(記帳代行の下請け型)
ここを理解していないと、
「丸投げしたつもりが、実は何も解決していなかった」
というケースが起こりがちです。
4. 税務相談ができる・できないの境界(税理士法の観点)
実務上、最も大きな違いは…
税務相談ができるのは税理士だけ
という点です。
会計事務所や入力外注業者に、
「この場合どの勘定科目?」「節税するには?」
などを聞くと、
- 「それは税務相談なので回答できません」
- 「税理士さんに聞いてください」
という対応になるケースが実際に多いです。
経理は単なる入力作業ではなく、
税務判断と隣り合わせなので、
税理士が入らない形での外注化は意外と限界があります。
5. 入力だけ任せる方式はなぜトラブルが多いのか
最近増えているのが
「とにかく安い入力外注」です。
しかし、この方式には落とし穴があります。
◆ (1)書類整理は結局社内で必要
レシートの整理・支払予定表の作成など、
入力以外の事務は残る。
◆ (2)仕訳の質が担当者次第
・勘定科目の誤分類
・減価償却のミス
・貸倒引当金など税務判断が必要な処理ができない
など、決算時に修正が大量に発生することがある。
◆ (3)税務相談は一切できない
価格が安いのは、税務判断を伴う作業が含まれていないため。
「安くて楽そう」に見えて、
結局経理・税理士双方の手間が増え、コストも増える
というパターンは珍しくありません。
6. 規模別:おすすめの経理体制モデル
◆ 【売上1億円未満の小規模企業】
→ 税理士顧問+入力は外注 or 社内で最低限対応
- 税務判断が頻繁に必要
- 書類量が少ないので、社長自身が一部対応しても問題なし
◆ 【売上1〜5億円の企業】
→ 経理1名の内製化+税理士顧問
- スピードも税務もどちらも必要
- 社内経理1名+税理士が最も安定するゾーン
◆ 【売上5億円〜】
→ 経理部を内製化し、税理士は高度な税務戦略へ集中
- 月次を自社で高速化
- 税理士には節税・組織再編・事業承継など戦略領域を依頼
7. まとめ
- 内製化:スピード最強だがコストとリスクが大きい
- 税理士委任:税務判断ができる唯一の外注先
- 会計事務所外注:入力中心、税務相談は不可のことが多い
- 入力だけ外注:安いがトラブルが多く、結局手間が残る
結局は、
「社内でどこまでできるか」×「税務判断がどれだけ必要か」
で最適解が決まります。
