経営者が押さえておくべき「残業」の基礎知識

~上限規制・届け出・残業代計算の実務ポイント~

1. 残業は法律上「例外的措置」

労働基準法では「1日8時間・週40時間」を超えて労働させることは原則禁止されています。
ただし 36(サブロク)協定 を労使間で締結し、労基署に届け出た場合のみ、
例外的に残業や休日労働を命じることが可能になります。
👉 届け出をしないまま残業させるのは違法となり、経営者に罰則が科される場合があります。


2. 残業の上限規制(罰則付き)

2019年の「働き方改革関連法」で残業時間に明確な上限が設けられました。
経営者は以下を守る必要があります。

  • 原則:月45時間・年360時間以内
  • 特別条項を結んでも:
    • 年720時間以内
    • 複数月平均80時間以内(休日労働含む)
    • 月100時間未満(休日労働含む)

これを超えると労働基準法違反として、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となる可能性があります。


3. 残業代の計算ルール

残業代(時間外割増賃金)は、従業員の基本給だけでなく、 手当を含む「所定賃金」 を基に計算されます。
最低でも以下の割増率が必要です。

  • 時間外労働(法定超過分):25%以上
  • 深夜労働(22時~5時):25%以上
  • 休日労働(法定休日に勤務):35%以上
  • 月60時間超の時間外労働:50%以上(※中小企業は2023年4月から適用)

👉「みなし残業代」を採用する場合でも、上限を超えた分は追加で支払う義務があります。


4. 経営者が注意すべき実務ポイント

  1. 36協定の未提出は即アウト
     従業員が残業していない場合でも、届け出を忘れると違法とみなされる可能性があります。
  2. 残業代の未払いは大きなリスク
     残業代請求は原則3年遡って行えます。退職者からの請求で数百万円規模になる例もあります。
  3. 残業削減は経営戦略
     長時間労働は生産性を低下させ、離職リスクを高めます。業務改善・人員配置の見直しと合わせて
    「残業時間の管理」が重要です。

まとめ

  • 残業は 36協定の届け出が前提
  • 上限規制を超えると 罰則の対象
  • 残業代は「支払わないと損」ではなく「支払わなければ違法」

経営者にとって残業管理は 法令遵守だけでなく、会社の信頼・従業員定着に直結する経営課題 です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!