はじめに
近年、職場のストレスや過重労働などが原因で、メンタル不調を訴える社員が増えています。
中小企業や個人事業主にとっても、従業員のメンタルケアは「人材を守る経営リスク対策」の一つです。
早期に気づき、適切に面談を行うことで、重大なトラブルを防ぐことができます。
1. メンタル不調を早期発見するためのサイン
① 行動面の変化
- 遅刻・欠勤・早退が増える
- ミスや報告漏れが目立つ
- 表情が暗く、声のトーンが落ちる
② 対人関係の変化
- 同僚との会話を避けるようになる
- 不機嫌な態度が増える
- 突然怒りっぽくなる
③ 業務面の変化
- 作業スピードが遅くなる
- 以前できていた仕事をこなせなくなる
- 些細なことでパニックになる
👉 ポイント:
日常の小さな変化を放置すると、長期休職や退職につながるケースもあります。
上司・同僚が気づいた段階で、早めの声かけが重要です。
2. 面談の基本姿勢と注意点
① 目的は「聴く」ことであり、「追及」ではない
面談の目的は「原因を追及すること」ではなく、従業員の現状を理解し、支援につなげることです。
特にメンタル不調時は、詰問調の話し方は逆効果です。
② 面談の進め方(基本フロー)
- 安心できる環境を整える(他人がいない場所・柔らかい雰囲気)
- 事実確認から入る:「最近体調はどう?」など軽い質問から
- 本人の気持ちを聴く:「無理してない?」など共感的に
- 必要な支援を確認する:「業務量を調整した方がいい?」など
- 記録を残す(トラブル防止のため、簡潔に記録しておく)
③ 注意すべきNG対応
- 「みんな頑張ってるのに」などの比較発言
- 「気合いが足りない」など精神論での指導
- 医師の診断書を無視して職務を続行させる
これらは、労災認定やパワハラ問題に発展する恐れがあります。
3. 面談後の対応
① 医療機関の受診を促す
本人が強く否定しない限り、専門医や産業医への相談を促すことが重要です。
診断書をもとに、業務内容や勤務時間を調整します。
② 職場でできるサポート
- 業務量の一時的な軽減
- 勤務時間の柔軟化(時短・在宅勤務など)
- チーム内のサポート体制の明確化
③ 会社としての記録・対応履歴の保存
面談記録、勤務状況、支援内容は、**後のトラブル防止(労災・ハラスメント対応)**
のために保管しておきましょう。
4. 経営者が知っておくべき法的ポイント
- 労働契約法第5条:「安全配慮義務」により、従業員の心身の健康を守る責任がある
- 労働安全衛生法第66条の10:「ストレスチェック制度」(従業員50人以上の事業場は義務)
- **ハラスメント防止法(改正労働施策総合推進法)**にも該当するケースあり
👉 規模の小さい事業所でも、メンタル不調に対する放置はリスクと認識しておく必要があります。
まとめ
メンタル不調は、誰にでも起こりうる問題です。
経営者として大切なのは、
- 「早期発見」
- 「冷静な面談」
- 「医療・専門家との連携」
の3点です。
従業員を守ることは、企業の信頼と生産性を守ることにつながります。